近年、特に若い世代でのテレビ離れやコロナ渦を経てインターネット利用が拡大し、WEBやSNS、YouTubeなどのデジタル広告も比例して拡大しています。
2019年にデジタル広告の出稿費用が初めてテレビ広告を抜いたことが話題になり、これからは費用対効果が可視化でき広告予算を立てやすいデジタル広告へシフトしてくべき?そう考えている広告担当の方も多いかと思います。
しかしながらテレビ広告を切り捨てるのはもったいないです!

成果(商品購入や問い合わせ等のコンバーシジョン)を確実に狙えるのがデジタルの良さですが、テレビ広告の認知力には及びません。今回は認知力にチカラを発揮するテレビ広告とはどういったものか、あらためてご紹介します。

テレビ広告はどういったものか?

テレビ広告とは番組中や番組と番組の間に放映される広告のことで、大きく3つに分類されます。

テレビCM

一般的にいうCM・コマーシャルです。
番組中に放映される15秒、30秒、60秒、120秒、180秒の尺の中で、映像と音声で商品やサービスの特徴を印象的に訴求できます。テレビCMには「タイムCM」と「スポットCM」と2種類あります。

<タイムCM>

番組にスポンサーにつきその番組内で流れるCMです。
テレビ番組を見ていると「この番組は●●会社の提供です」といったアナウンスや企業のロゴが表示されるのを見たことがあるかと思います。
番組が放送される決まった日時にCMが流れ、CMのターゲットと視聴者の親和性が高い番組を選んでCMを出すことで宣伝効果をより高いものにします。タイムCMは1クール(3ヶ月)ごとの契約で、放送期間が2クール(6ヵ月間)契約ということが多いです。視聴習慣がついた番組だと特定の視聴者にピンポイントで訴求でき、また視聴率が高い番組だと多くの視聴者にCMを認識してもらえます。長期間に渡って会社や商品・サービスを知ってもらいたいといった認知やブランディングに優れています。

<スポットCM>

番組のスポンサーにつかず様々な番組で放送されるCMです。
あらかじめ決めた出稿予算内で、放送期間・時間帯を指定でき、番組を指定しないので幅広い視聴者に見てもらえる可能性があります。時間帯のパターンはあらかじめターゲットを想定でして選択ができます。

時間帯ターゲット
全日型 月~日曜日の朝から深夜までの
すべての時間帯
オールターゲット
ヨの字型 平日の朝・昼・夜~深夜、
および土日の全日
主に若年女性+主婦など
コの字型 平日の朝・夜から深夜、
土日の全日
平日日中は働いていて家にいない人など
逆L字型 平日の夜から深夜、
土日の全日
若者+平日日中は働いていて家にいない人など

料金コストは、逆L>コの字>ヨの字>全日の順で安くなります。
※放送される時間帯の料金ランクも加味されます。(タイムランク)

新発売の商品やサービスの告知・イベント開催の周知などキャンペーンを打ちたい時期や、企業の季節要因などの売上げ変動に応じて短期間に集中的にCMを打つ事が可能で、調整しやすい出稿の仕方になります。

ミニ番組

ミニ番組とは、番組と番組の間に約5~6分間に渡って放送される短い時間帯の番組です。
天気予報やスポットニュース・暮らしの情報・テレビ通販が多い枠ですが、ほとんどが1社提供ですのでCMと比較して5分ほどの長い枠でPRが可能です。

インフォマーシャル

商品やサービスの情報を番組として紹介するテレビ広告です。
企業活動の宣伝やテレビ通販などが多く、60秒と短い尺から始まり、90秒、120秒、180秒、4分、5分、29分、長いものでは1時間近くかけて、ひとつの商品の情報を詳しく紹介していきます。
※企業活動の宣伝等一般広告はスポットCM扱いで5分まで。
テレビ通販では29分枠が主流で、バラエティ番組や情報番組のような形式で構成されるので広告と思われず番組として見て頂けます。商品やサービスの魅力を細やかに訴求できることに加え、注文や問い合わせといった視聴者がアクションを起こすことを目的とした構成や演出(ストーリー仕立て)で制作されるため、商品購入や問い合わせなど購買活動の後押しができます。

また広告出稿できるエリアも各媒体(テレビ局など)によって多岐に渡り、全国~地域毎(地元ケーブル局エリア内等)と幅広いエリアで選定が可能です。

  • 地上波テレビ局:フジテレビ・日テレ・TBS・テレビ朝日・テレビ東京といったキー局や各都道府県にあるローカル局
  • BS放送:全国
  • CS放送(有料の衛星放送):全国
  • ケーブルテレビ:全国~地域ごと。地上波やBS・CSの電波が届きづらい地域もカバー。

テレビ広告のメリット・デメリット

テレビ広告のメリットといえば、認知力や態度変容力、信頼性が挙げられます。

認知到達率はテレビ広告が圧倒的

商品やサービスを知らない人、また名前はしっていても詳細までは分からない人も、テレビ広告をきっかけに認知が広がり深まるケースは少なくありません。
テレビは日常において、天気予報やニュース番組等で情報を得たり、娯楽や趣味の番組を楽しんだりと総合的に、生活に必要な要素として馴染みのある媒体です。テレビ画面をしっかり見ないにしても、朝や日中の時間が空いた時、帰宅後のリフレッシュする時間帯など習慣的にテレビをつけている方も多いです。興味を持った人が主体的に情報を取りにいく他媒体と比べても、テレビCMの映像や音声でしらずしらずのうちに受動的に情報を得ている場合も多く、幅広いターゲットの顕在意識にリーチしているといえるでしょう。
メディア接触率の調査によると、若年層10代~20代ではWEB(動画・インターネット)の接触率が高いですが、30代ではWEBとテレビがならび、40代以降では圧倒的にテレビの接触率が高く、国民全体でみると大きく差がでています。

引用元:(NHK放送文化研究所「国民生活時間調査」より)
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20210521_1.pdf
引用元:(NHK放送文化研究所「国民生活時間調査」より) https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20210521_1.pdf

テレビ広告が信頼できると答えた人は、全体の56

野村総合研究所の調査結果によると、「デジタル広告」「テレビ広告」の信頼性について生活者の反応を分析したところ双方「どちらかというと.. 」を含めてテレビ広告は56% > デジタル広告13%と、テレビ広告の信頼度が圧倒的に高いのが分かります。

デジタル広告とテレビ広告の信頼度

引用元:(野村総合研究所:INSIGHT SIGNAL /「テレビCMはきちんと見てる?」

テレビは公共性が強くまた許可事業なので視聴者に正確な情報を伝える義務があります。

テレビ広告も放送される前に、情報・表現の正確性や倫理性、放送基準に抵触していないかなどのCM考査と、出稿する事業者に関しても事業内容などの業態審査は必ず行われます。こういた厳密な考査が放送前に実施されるので視聴者の信頼担保につながります。「テレビで紹介されました」と実績があることでブランドや企業イメージが高まる印象をもつ人は多いです。

テレビ広告は態度変容力も期待できる

態度変容とは外的な力に影響されて態度が変化すること指す心理学の用語で、

プロモーション戦略において顧客行動を分析するモデルで最も有名なものとして「AIDMAモデル」というものがあります。顧客の心理・行動を、商品やサービスを知らない状態から購買行動までのプロセスを描いています。

AIDMAの法則では、顧客(消費者)の心理は次の5つの段階で構成されています。

  1. Attention(注意):消費者が商品やサービスを知る段階
  2. Interest(興味、関心):消費者が対象の商品・サービスについて気になっている段階
  3. Desire(欲求):関心を持った消費者がサービスについて詳しく知り「欲しい」と思う段階
  4. Memory(記憶):消費者が実際に商品・サービスの購入をしようと思っている・購入の前段階
  5. Action(行動):消費者が商品・サービスを購入する段階

AIDMAの法則を「広告を見た後に取る行動」の調査結果に当てはめてみると、テレビ広告を見た人の73.5%がサービスや商品を「認知」しています。

①興味・関心をもって詳しく詳細を知りたいと欲求し、実際に購入しようと記憶・検討する人が55.1%
②実際に購入した人は18.4%

購入までに至らなかった①の人も、その後の施策に触れ、検討が進むことで顧客になる見込みがある潜在顧客になりうります。

広告を見た後に取る行動

広告を見た後に取る行動
引用元:(野村総合研究所:INSIGHT SIGNAL /「テレビCMはきちんと見てる?」

すべてのサービスや商品が上記に当てはまる訳ではないですが、テレビ広告は「認知」だけではなく、消費者に行動を起こさせる要素を持った広告手段といえます。
テレビの総世帯普及率(テレビが1台でもある世帯の割合)は約93%です。
生活になじんだ媒体で情報の信頼性も高く、視聴者の母数も大きいので数ある媒体の中でも、広くユーザーにリーチすることができ、またリーチ後の目的の達成(購入やサービスの利用)にも期待が高まる媒体といえるでしょう。

また、PCやスマートフォンより比較的大きいディスプレイで「映像」と「音」とで視聴覚に届きやすく、ながら見などの受動的に視聴する潜在層までリーチは広まります。テレビはいまだに影響力は強いです。

とはいえ気になる「テレビ離れ」の傾向

テレビ広告が認知に優れているとはいえ、若年層にかかわらず30代40代以降の年代でも生活の中でインターネットでの情報収集傾向は確実に強まっていています。
テレビ広告のデメリットの1つとして、費用対効果を計測することが一般的に難しいといわれています。かかったコストに対して効果を実感しづらい点があります。

デジタル広告は費用対効果が可視化できるのが特徴です。テストとして数百円単位から始められ、商品(サービス等)を訴求したいターゲット(年齢・性別・住居・興味関心などの属性)にピンポイントで絞って広告でき、課金対象をインプレッション(表示された時点)とするか、クリックとするかも選ぶことができるなど、細かく検証しながら、予算を調整しながら出稿できる点が最大のメリットです。

ただ、テレビ広告も効果を全く計測できない訳ではなく、視聴率やアンケートで購買層を調査、CM放送前後のホームページの流入数の変化などを計測して効果検証することはできます。

2つ目のデメリットとして、制作コストがかかる点です。
テレビ局の放送基準を満たした映像素材を制作するとなると、技術と機材を備えた制作会社への依頼が必要です。タレントを起用してクオリティに細部までこだわって制作すると通常コストも時間もかかってします。

一方、WEB動画は利用者にクリックをして「動画を最後まで見てもらう」という点で高いクオリティにこだわらざる得ないです。

テレビCMと比較するとWEB動画の制作費は安いですがクオリティにこだわるとそう安くもありません。テレビクオリティの映像素材を作成しておけば、その後WEBへの展開もし易いというメリットもあります。デジタル広告でターゲットを絞って効果的に広告を打ったとしてもその範囲内でしか顧客を創出できません。まずは広く知ってもらい、顕在層の中から将来の顧客になる人を育てる手段としてテレビ広告は有効的です。

中長期的な広告戦略として考えるとその費用はけして高くはなく、費用対効果も十二分にとれます。

テレビ広告のより良い投下の仕方

テレビ広告もデジタル広告も共通して、広告を投下するにあたって、広告をする「商品(サービス等)」の特性や訴求ポイント・対象となるターゲット層・地域性などの要素を考慮し、「どのエリアの」「どの時間帯の」「どの番組で」「どのくらいの頻度で」「どんなCM(クリエイティブ)を」といったことで媒体を選定し、放送(出稿)枠の買い付けをしてきます。
広告出稿の手段を複数合わせることで(クロスメディア)より高い費用対効果を生み出す可能性があります。
民放連研究所の調査によると、テレビ広告、テジタル広告(YouTube動画広告)をそれぞれ単体で実施するよりも2つ掛け合わせて実施した場合の方が相乗効果を得ていることがわかります。

民放連 研究所第2回調査
引用元:(野村総合研究所:INSIGHT SIGNAL /「テレビCMはきちんと見てる?」)

上記ではYouTubeとの掛け合わせでしたが、リスティング広告やディスプレイ広告など商品の詳細をテキストと画像(ホームページやランディングページ)で訴求できるものを掛け合わせても相互作用の見込みはあります。

※検索連動型広告(リスティング広告):GoogleやYahoo!などで検索したキーワードに関連した広告を検索結果画面に表示する
※コンテンツ連動型広告(ディスプレイ広告):広告枠があるパートナーサイトにバナーやテキストなどの広告を表示できる

まとめ

  • 潜在意識下まで多くの人に知ってもらう、認知してもらう:テレビ広告
  • 顧客の属性などターゲットを詳細に選定しコンバージョン(購入・契約・問い合わせ等)まで導く:デジタル広告

認知に最大の強みを持つテレビ広告、購入・問い合わせとったコンバージョンへの導線設定に強みをもったデジタル広告。それぞれのメリットを生かし、シチュエーションによって実施するのが一番効果的な広告投下の仕方ではないでしょうか。