総額表示の義務とは
2021年4月1日より、総額表示の義務が復活します。この件で、広告業界は少しバタバタしています。
まず総額表示化について、国税庁のHPから引用すると
消費者に商品の販売やサービスの提供を行う課税事業者が、値札やチラシなどにおいて、あらかじめその取引価格を表示する際に、消費税額(地方消費税額を含みます。)を含めた価格を表示することをいいます。
国税庁: No.6902 「総額表示」の義務付けhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6902.htm
とあります。簡単に言うと、
消費者が支払う10%の消費税を含めた、総額11,000円と表示しなさい。
ということです。ただ、料金の表示には様々あり、国税庁のHPでは具体的な表示例として以下を挙げています。
例えば、次に掲げるような表示が「総額表示」に該当します(例示の取引は標準税率10%が適用されるものとして記載しています。)。
国税庁: No.6902 「総額表示」の義務付けhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6902.htm
11,000円
11,000円(税込)
11,000円(税抜価格10,000円)
11,000円(うち消費税額等1,000円)
11,000円(税抜価格10,000円、消費税額等1,000円)
広告業界がバタバタとしているのは、これまで使われていた
等の表示は上記の例には含まれていないという点です。
単純なところでいうと、これまで(税抜)価格を表示していたものはすべて書き換えを行わなければいけません。Web上のHPやSEサイトなど比較的書き換えが容易なものは良いのですが、パンフレットや商品パッケージなどの印刷物になると、時間もコストもかかり、失敗も許されません。
とはいうものの、総額表示については2013年から長い「特別措置」期間を経ての義務化になるため、対応せざるを得ないというのが現状です。
通販業界と総額表示
広告関係で悩みが特に多いのが通信販売の業界です。
通信販売において、価格設定とその表示手法は商品が売れるかどうかを決める重要なポイントになります。
例えば「端数価格」と呼ばれるものがあります。10,000円というキリの良い数字よりも、9,800円などの端数にすることで、200円以上に安い印象を与えられるという消費者心理研究に基づいた価格設定なのですが、通信販売ではこの様なテクニックが多用されているのです。さらに、TV通販などでは、消費者におトクな印象を持ってもらうために、価格表示の大きさやエフェクトにも工夫がされています。
しかし、総額表示になると、ここが変わってしまいます。表示については国税庁によると
[ポイント]
支払総額である「11,000円」さえ表示されていればよく、「消費税額等」や「税抜価格」が表示されていても構いません。 例えば、「10,000円(税込11,000円)」とされた表示も、消費税額を含んだ価格が明瞭に表示されていれば、「総額表示」に該当します。
国税庁: No.6902 「総額表示」の義務付けhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6902.htm
とされているのですが、この「明瞭に表示」の解釈が統一されていないため、メディア側の認識も様々になっており、広告として非常に悩ましいポイントとなっているのです。
本体価格が同じでも、表示の仕方で分かりやすさや印象は変わります。
従来に最も近い税込価格の表示を行うタイプですが、「明瞭に表示」の条件を満たしているかの解釈が分かれます。メディア側に確認をしたところ、下の二つを推奨しているところが多いようです。
最後に
総額表示については、消費者が表示に慣れるしばらくの間、今までよりも「値上がりした」という印象を持つ方が増えることは予想されます。
メーカーにとっては苦しい部分が多いのですが、このタイミングで値下げを行ったり、総額表示対応の商品セットを作るなど、前向きに努力をされているメーカーさんもあります。
我々広告の制作側は、本来の総額表示の目的である、消費者にとっての分かりやすさを損なわないことはもちろんですが、商品を売るメーカーにとってできる限りデメリットの無いように工夫をしていきたいと考えています。