食べ物のCMをふと見たときに無性にそれが食べたくなることはありませんか?あの現象にはシズル感が一役買っているといっても過言ではありません。
「シズル(感)」。英語のsizzle(=揚げ物などがジュージューしているさま)が語源ですが、広告業界では食品が美味しそうに見えることをシズル感といいます。たとえば、トマトの表面に水滴がついていてみずみずしくフレッシュな様子や、レタスなど葉物野菜を切ったときのシャキッとした音、肉が網の上でじゅうじゅうと音を立てて焼けている状態など食欲を掻き立てるような表現を総称してシズルと呼びます。

味や香りを表現する

Pantameron / Pixabay

帰り道のどこかの家の焼き魚のにおい、ひといきついたときに鼻をくすぐるコーヒーの香り、夏真っ盛りの仕事終わりに飲むビールの味…。そんな場面に遭遇すると、人はついついつられて「美味しそう」と思ってしまうものです。しかし、現代の一般的な生活で触れることのできる広告では味や香りを体験させることは出来ません(体験できる未来は近いかもしれませんが…)。そこで、食品の広告では効果的にシズル感を用いることが大切になります。

受け手の記憶に結び付けるシズル

シズルそのもので美味しいと思わせることより、シズルで受け手の美味しい記憶を呼び起こすことがポイントです。

○コピーのポイント

「カリッ」「ほくほく」「ピリッ」「もちもち」「じゅわぁ~」。日本語は食品に関するオノマトペ(擬音語・擬態語)が非常に多い言語です。日本語で食感を表わす用語は全部で445語とされており、なんとそのうちの7割がオノマトペだといいます。ひとくちに「甘い」「辛い」などと表現せず、「シャキッ」「パリパリ」などの【音】、「とろ~り」「ぷりぷり」などの【触覚】、そして【温度】、この3方向からの考え方が大事です。

○ビジュアルのポイント

ビジュアルではその食品の食感なのか温度なのか味なのか、何を伝えたいかを絞ることが重要になります。たとえばツヤを表現したいときはハイライトなど光の工夫を、彩りを表現したい場合は全体の素材のバランスの調整を、みずみずしさを表現したい場合は水滴や水しぶきなどを、あたたかさを表現したい場合は湯気を効果的に使うことが大切です。

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