近年、東京オリンピック・パラリンピックを契機として、「ユニバーサルデザイン」という言葉が注目されるようになりました。

ユニバーサルデザインとは、障がいの有無や年齢、性別、人種などにかかわらず、可能な限り多くの人々が利用しやすい製品やサービス、施設などをデザインする考え方です。
その中でも「視覚情報」に特化したものが「メディア・ユニバーサルデザイン(MUD)」です。

今回は、高齢者や障がいのある方、外国人の方などにも、見やすく、伝わりやすい情報発信をするために「メディア・ユニバーサルデザイン」の考え方をご紹介します。

1.メディア・ユニバーサルデザイン(MUD)とは

人間は情報の80%以上を視覚から得ていると言われています。

そのため、「デザイン」「文字の大きさや形」「色の使い方」などに配慮することで、個人の色の感じ方の差や年齢による見え方や理解力に関係なく、情報を受けとるすべての方に正しく情報が伝わるようにするという考え方です。

主な対象者は、高齢者や弱視・色覚障がいなどの視覚に障がいのある方ですが、子どもや外国人の方をはじめ、老若男女を問わず多くの人に情報が伝わりやすくするための配慮といえます。

2.メディア・ユニバーサルデザイン5原則

「メディア・ユニバーサルデザイン」には5つの原則があり、これらを考慮した看板、サイン、WEBコンテンツ、印刷物などのメディアの作成が推奨されています。

①アクセシビリティ(accessibility)…接近容易性

必要な時に必要な情報が得られることです。
見えない・読めないなど、情報の入手を妨げる要因を取り除く工夫が必要です。

②ユーザビリティ(usability)…使いやすさ

利用状況に関係なく、どんな人にも使いやすいことです。
より快適に・便利に使える使いやすさの工夫が必要です。

③リテラシー(literacy)…読めて理解できる

どんな人でも内容が理解できることです。
内容がより理解しやすい表現や構成による工夫が必要です。

④デザイン(design)…情緒に訴える

どんな人にも魅力的で行動を誘発するデザインであることです。
情緒に訴え、行動を促す工夫が必要です。

⑤サステナビリティ(sustainability)…持続可能性を満たす品質であること

人や環境にやさしく、将来にわたって長く使用できることです。
過大なコスト負担がなく、環境に優しいものであることが必要です。

3.必要とされる機関

メディア・ユニバーサルデザインは、主にこのような機関で使われています。

■教育機関

(出版社/教材メーカー/玩具メーカーなど)

教材・玩具などは子どもでもわかりやすいよう、漢字にふりがなを付ける、簡単な言い回しにする、イラストにするなどの工夫が大切です。

■公共性の高い機関

(教官公庁/公共交通機関/新聞社/電力・ガス・水道/病院/公共施設など)

多くの方が目にする、新聞・地図・看板などは、誰に対しても公平に情報が伝わることが重要です。

外国人の方には、英語などの他言語での表示やイラスト・ピクトグラムでの表示が必要になります。

■危険・用法を告知する機関

(薬品/食品/機器の取り扱い/建築・製造現場/標識類/ハザードマップ類など)

危険を知らせる標識や、災害時のハザードマップ、薬品や食品類の注意事項は、情報の伝達間違いが体に影響を与えることもあるため、特に配慮が必要です。

■情報の公平性が求められる機関

(企業のIR情報/金融機関/生保・損保会社など)

金融・保険の約款は、加入者の権利や財産の保全に関わるため、明確に分かりやすくする必要があります。

4.まとめ

今回は、視覚情報の見やすさや伝わりやすさに配慮する「メディア・ユニバーサルデザイン」についてご紹介しました。

年齢や性別を問わず「伝わりやすい」デザインの考え方を理解し、より多くの方々にわかりやすく情報が伝わる社会を目指していきたいですね。

次回は、広告デザインを考える上でも知っておきたい「メディア・ユニバーサルデザイン」における「見やすい文字・文章」についてご紹介します。