はじめに

人は、無意識に広告を見て商品の良し悪しを判断し、購入行動を起こしています。それには、広告がもたらす商品への「印象付け」が大きく影響しています。

 広告を制作するうえで、消費者にその商品をどう印象づけたいかということを意識することが重要になります。皆さんが見ている広告は、実は心理学を根拠にした効果的な「印象付け」が施されています。

今回は、「印象」に関する心理学の知識から分かる、消費者の心を掴む広告手法をご紹介いたします。

初頭効果 

まず初めに、「第一印象」についての心理効果と広告手法についてご紹介します。第一印象は数秒で決まると言われており、その数秒でついたイメージがその後の情報や判断に影響を及ぼします。これを『初頭効果』といいます。

広告においても第一印象は重要で、消費者の心を掴めるかどうかが大きく関わってきます。

例えば、動画広告では、最初の5秒でレスポンスが大きく変わるというデータがあります。最初の5秒間に視聴者をいかに惹きつけて興味をもってもらうかで、視聴完了率は変化します。

Yahoo!JAPANの調査(2018年5月~2019年1月)によると、「5秒以内に何の訴求か分からない」と答えたユーザーに対し「3〜5秒以内に興味を持った」と答えたユーザーが、ブランド認知を144%、メッセージ連想を168%、購入意欲が155%とそれぞれの指標で上回ったという結果が出ています。

参考:「Yahoo! JAPANが考える「動画広告」の4原則」

たった5秒で商品の印象付けが行われ、購入意向にも大きく影響してくることが分かります。

また、WEBサイトでは、最初に見せるファーストビューのデザインがレスポンスを左右するともいわれています。それは、初めに見る画面が消費者にとって魅力的なものだと判断されれば、途中で離脱せずサイト全体をしっかり見てもらえる確率が高まるからです。

いかに、第一印象を良くするかによって、商品のイメージや価値を高め、購入率を上げることに繋がるのです。

第一印象で消費者の心をまず掴むことを意識して広告制作することをお勧めします。

シャルパンティエ効果

あなたは、以下2つの文のうち、どちらがビタミンCを豊富に含んでいるように感じるでしょうか?

  • 「レモン150個分のビタミンC配合」
  • 「ビタミンC3,000mg配合」

なんとなく、「レモン150個分のビタミンC」の方が多く感じませんか?
実は、レモン1つあたりのビタミンCの含有量は20mgのため、どちらも含有量は同じです。
しかし、ビタミンCの含有量については一般的には知られていないため、量で言われるよりも「レモン150個分」とイメージしやすい事物に置き換えられた方が、分かりやすく含有量の多さが伝わります。
このように、客観的数値よりもイメージが先行してしまい錯覚することを『シャルパンティエ効果』と言います。

同じものでも脳が錯覚して、同じものと感じない心理現象・効果のことです。

この心理現象は、もともとは、重さに関して言われていたもので、以下のような同じ重さのものが二つあるとき、実際同じ重さであっても、イメージにより脳が錯覚して重さが違うと感じてしまう現象から発見されました。

「米や鉄などの重量物」

「綿や発泡スチロールなどの軽量物」

100㎏の鉄と100㎏の綿では同じ重さなのに鉄の方が重く感じてしまいます。

それでは、どのようにこの心理効果が広告に活用されているのか見ていきましょう。

「東京ドーム○個分の広さを誇るテーマパーク!」

実際の東京ドームの面積を知っている人は少ない上に、そもそも東京ドームに行ったことがない人も大勢います。

しかし結果として、その土地が東京ドームと比較されたことにより、実際の面積を伝えるよりも広いという印象付けがされます。

1,000円と999円の違い

値段表記方法でよく使われている手法です。たった1円の差ですが、値札が3桁か4桁の違いだけで印象が大きく変わります。

1円の損で、より多く購入に繋げることができます。

3千個と3,000個の違い

「3千個の販売実績あり!」よりも、「3,000個の販売実績あり!」と記載した方が、強いインパクトがあり、多く売れている感覚になります。

定価5,000円の商品がディスカウントされている場合、どちらがお安く感じるでしょうか?

  1. 全品50%OFF、さらにレジにて 20%OFF
  2. 全品60%OFF

どちらも値引き額は3,000円で同じですが、①だとなんとなく「50%プラス20%オフで、70%オフか!」という印象を持ちませんか?これもシャルパンティエ効果を用いた錯覚、数字のマジックです。

このように、人間が持っている具体的な事物に対する「これはこのようなものだ」というイメージを利用することによって、錯覚を起こさせることが出来ます。

多くの人が持っているイメージを分析し、具体的な比喩や数値を使って表現することにより印象付けは鮮明に浸透し、広告の魅力を増させることができるのです。

権威への服従心理

 同じ化粧品でも「モデルの○○さんが愛用」というコピーがあれば、そちらの方が魅力的に感じませんか?それは、芸能人が使っているなら間違いないと感じるからだと思います。

このように権威性のある人や事物が示すものを「正しい」と思いやすくなる現象のことを『権威への服従心理』といいます。

権威の後ろ盾を商品やサービスに付加できれば、その商品やサービスは影響力や説得力を持つことになります。同じことを伝える場合でも権威の有無でその説得力が異なるのです。

広告で「○○コンテストで優勝したケーキ」や「有名アスリート○○選手も認めたサプリメント」などのコピーを見たことがある人は多いのではないでしょうか?

商品やサービスに権威を与える影響力のある人、組織、受賞歴、資格等を合わせて提示すると、より商品の説得力が増し商品価値を高めることができ、良い印象をもたらします。

まとめ

広告は、商品やサービスの印象付けを行う重要な役割を担っています。広告がもたらす商品への印象付けによって、結果が大きく左右されます。

第一印象で消費者の心をぐっと掴み、分かりやすい比較材料・説得材料を明記し、より効果的な印象付けを行うことで数多くある競合商品から“選ばれる商品”に導くことが出来ます。

消費者にどう「印象付け」されるかということを意識して広告制作してみてはいかがでしょうか。